Story of Shinjuku 2-chome ゲイ・コミュニティの誤ったイメージを正し、陽の当りにくい世界の実情を垣間見せる『新宿二丁目の文化人類学』 『新宿二丁目の文化人類学――ゲイ・コミュニティから都市をまなざす』(砂川秀樹著、太郎次郎社エディタス)が思い出させてくれたのは、グラフィックデザインの仕事をしていた20代のころの記憶だ。 あるとき、直属の上司からゲイであることをカミングアウトされたのだった。「君ならわかってくれると思って......」と彼はいったし、私自身、ゲイに対してはなんの偏見も持っていなかった。だから驚きもせずに事実を受け入れたが、80年代中期はまだ、ゲイがいまほど社会的に認知されていない時代でもあった。 事実、80人ほどの社員がいたその会社で、上司の秘密を知らされていたのは私だけだった。彼も深刻な表情で、「もし知られたら、僕はこの会社にいられなくなる」と話して