SFのサブジャンルのひとつに、ミリタリーSFがある。ミリタリーSFの定義は、なかなか難しい。大雑把に書くと、軍人が主人公、戦争や何らかの敵との戦いが題材、主な舞台は未来の宇宙といったところだろうか。 ロバート・A・ハインライン『宇宙の戦士』(早川書房) ロバート・A・ハインラインの『宇宙の戦士』あたりを起点として、アメリカの作品を中心にしながら発展していった。多数の作品が翻訳されているので、実際に読んでみれば、どんなジャンルであるか体感できるはずだ。 谷甲州『航空宇宙軍史・完全版一 カリスト-開戦前夜-/タナトス戦闘団』(早川書房) 一方、日本でも谷甲州の「航空宇宙軍史」シリーズを始め、幾つかの優れたミリタリーSFがある。だが、それほど作品数が多いわけではない。なぜなのか。やはり戦後の歴史が関係しているのだろう。第二次世界大戦の敗戦国となった日本は、新たな憲法により「戦争の放棄」「戦力不保