前半の「ラブコメ」から後半の「サイコスリラー」へ、同一映画内での大胆なジャンル横断。画面のトーンすらガラリと変わっていくわけで、観客を置いてけぼりにしかねない実にリスキーな手法である。成功例としては、ギョーム・ブラックが『やさしい人』(2014)で展開してみせたロマンティックコメディからフィルムノワールへのスムースな切り替えが記憶に新しいが、本作もまた映画のコードチェンジを見事にやり遂げている。スーっと伸びた奥行きある画面構成が基調となっており、それがラブコメにおいてもサイコスリラーにおいても崩れないのが勝因だろうか。充実したショットの連なりで物語られ、ランタイムは99分という見事な数値を叩きだしている。監督の前作『銀の匙 Silver Spoon』(2014)にはまったく好感を寄せなかった身としても、この『ヒメアノ~ル』を傑作と呼んでしまう事にはなんら躊躇がない。驚かされたのは、99分と