Essays now and then へ戻る 今福龍太が読む 3 ベルナベ、シャモワゾー、コンフィアン『クレオール礼賛』(平凡社) 「ヨーロッパ人でもなく、アフリカ人でもなく、アジア人でもなく、われわれはクレオール人であると宣言する。それは我々にとって一つの心的態度の問題であろう」。こう書きはじめられる本書が、文化マニフェストとしての熱を放射する特別の書物であることには疑問の余地がない。クレオール人という自覚は、本書で著者たちがくりかえし述べるように、言語と文化の多様性を建設的に探求することで世界についての意識を保持するという新しい認識のあり方がうみだす、人類の未来的なアイデンティティの課題にかかわっている。 本書の三人の著者が生を受けたマルティニック島は、カリブ海の小アンティル諸島に位置している。島は一四九三年にコロンブスによって「発見」され、一七世紀にフランスの植民地となった。以後は