祖父がボケると繰り返し繰り返し言ってた。 戦争末期、祖父は十代前半の少年だった。 山に登って敵機が来たら報告するのが仕事。 いちいち一機だけ来たときなんかも報告してたらしいが、そんなことで報告するなと怒られてから、ただボンヤリと空を眺めるだけの仕事になったらしい。 その日もボンヤリと空を眺めていた。 遠くに一機だけ飛んでるのを見たらしいが、担当の範囲じゃないし機種もよくわからない。 たぶんアメリカのだということ以外よくわからないから、例によってほっといたようだ。 晴れてなかったら気づかなかったと言ってた。 その飛行機はそのままどっか行った。 また一機現れたが、とくに何も思わず、ひたすら空を眺めていたらしい。 でご存知の通り、爆弾が落ちた。 その時祖父は真上を見ていたらしい。 こっそり持ってきてたおにぎりを頬張り、残りも全て食べるか否かを真剣に悩んでた最中だった。 朝っぱらに影ができるくらい