書名に「言葉でたたかう技術」(参照)とあり、帯には「ビジネスで、外交で、日常で勝つための弁論術」とあるので、そういう技術を習得したいと思って読む人もいるかもしれないし、私もそういう本なのかと思って読み始めたが、そういう本ではなかった。そういう小手先の技術の本ではないというべきだろう。むしろその技術の奥義に触れた書籍であり、一読すればなるほどこうすれば欧米人と議論しても負けることはないという秘訣を知ることができる。 あえてひと言でも言えないこともない……苦労。あるいは、努力。あるいは、根性。ど根性というべきかもしれない。第一章「アメリカでのけんか修行」ではその苦労がエキサイティングに語られている。おしんアメリカに行くといった風情でもあり、江藤淳の「アメリカと私」(参照)や須賀敦子の「ヴェネツィアの宿」(参照)なども思い出す。戦後の焼け野原のなかで学問を志した青年たちは異国の地にあって歯を食い