根本的な治療法のない「寄生虫妄想症」の恐怖 寄生虫妄想症という精神疾患がある。自分の体に、ダニ、シラミ、ノミ、蠕虫(ぜんちゅう)といった寄生虫がいるという妄想であり、患者は実際には存在しない小さな虫が体を這いまわり、皮ふを刺し、もぐり込み、体の中で毒を分泌している――そう強く思い込む。 マッチ箱などの容器に、身のまわりの土や埃(ほこり)、糸くず、髪の毛、はがれた皮ふ、かさぶたといった「標本」を集め、医師の元に持参することもある。 この疾患は脳で過剰になったドーパミンと関係しているという説があり、コカインやアンフェタミン(覚醒剤)といった薬物の乱用が症状を誘発するともいわれている。 映画やドラマなどでは、重度の薬物依存症患者を手っ取り早く表現する方法として「体の中に虫がいるんだよぉ!」と何もない腕などを搔きむしる演出が定番だ。 気のせいであるといえばそれまでのことではあるが、当人には実際に虫