『クーデターの技術』(クルツィオ・マラパルテ、中公文庫、2019年6月20日)を読んだ。 ●本書の内容本書はタイトル通りクーデターを成功させるための方法論と、防御するための方法論を著者の生の体験をもとにまとめたものである。 本書は90年前、スターリン、ムッソリーニ、ヒトラーの時代に書かれたもので作者はその時代に生き、実際に彼らと直接、間接に関わったことがある。そんな昔の本がいまどき役に立つのかと思うかもしれない。そういう読者のために冒頭に「解題」があり、本書の現代における意義を説明している。 そもそもクーデターの現場にいて、調べ、感じた経験をまとめた名著は少ない。こうした貴重な経験と暦的事実が著者の洞察力によってクーデターの実行と防御の方法論にまとめられている。 ただし、本書はきわめて文学的な体裁となっており、情緒的な表現に満ち、要点がチャートにまとめられていたりはしない。私は小説家という