4月1日以来、新元号「令和」の話題が尽きない。初めて出典が漢籍ではなく日本の国書『万葉集』から取ったということで、『万葉集』もにわかにブームになりそうな気配だ。 一部で新元号の考案者と報じられた文学者の中西進さんが書いた『万葉の秀歌』(ちくま学芸文庫)とともに重版が決まったのが本書『万葉集から古代を読みとく』(ちくま新書)である。 著者の上野誠さんは奈良大学教授(国文学)。しかし本書は普通の『万葉集』の入門書ではない。古代社会において歌とは何か、古代社会において『万葉集』とは何であったのか、を説いた異色の『万葉集』解説書だ。何せ書き出しが「新海誠監督の映画『君の名は。』(二〇一六年)を見た」から始まるのだから。 この映画のモチーフは『万葉集』なのだという。映画を見ての感想をこう綴っている。 「まいった。すごい――。折口信夫が、今生まれたら、国文学とか、民俗学とか、そんな陰気な学問はしないだ