デジタルゲームのアーカイブについて―国際的な動向とその本質的な課題― 1. はじめに 世界的に活動しているゲーム開発者、研究者のNPO組織「国際ゲーム開発者協会」(International Game Developers Association:IGDA)の専門部会である「ゲーム保存研究会」(Game Preservation SIG)は、2009年3月、最近のデジタルゲーム保存の現状と課題についての白書(以下、「ゲーム保存白書」と称する)を取りまとめた。それは、次のような書き出しで始まっている。 「デジタルゲームの保存は急を要している。毎年、何千ものゲームが、他のすべてのデジタルメディアを脅かしている寿命の問題、すなわち情報の欠落と旧式化によって失われつつある。デジタルメディアは、原材料の経年劣化によって驚くほど寿命が短く、メディアフォーマットが絶えず変化するために急速に陳腐化する。
2010-05-04 當山日出夫 この本を読んで、考え方が変わった。そう断言できる。文化財のデジタル・アーカイブ、これもなかなか捨てたものではない。いや、この方向に新しい未来がある、そう実感させてくれる。 『文化財アーカイブの現場-前夜と現在、そのゆくえ』.福森大二郎.勉誠出版.2010 http://www.bensey.co.jp/book/2225.html そう大部な本ではないのだが、読むのに時間がかかってしまった。それは、読みながら考え込んでしまったから、である。本当に、この考え方でいいのであろうか、しかし、こう考えざるを得ない……このような思いにとらわれながら、考え考えしながら、ようやく読み終えた。 これまでの私の考えを端的にいえば、たかがデジタル複製ではないか、実物の方がいいにきまっている、まあ、このように考えていた。しかし、この考え方が、この本を読んで変わってしまった。デジ
2010-03-17 當山日出夫 ようやく、明後日の京大人文研の「東洋学へのコンピュータ利用」セミナーの発表資料を、ととのえた。原稿(論文)の方は、かなり以前に出して(送信して)ある。発表のパワーポイントをつくりながら、まとめのところで考えたこと。 第21回 東洋学へのコンピュータ利用 http://www.kanji.zinbun.kyoto-u.ac.jp/seminars/oricom/2010.html 電子図書館、デジタルライブラリと言っても、ただ、本を読むのが、紙の本から、ディスプレイに変わるだけでは、ただ、それだけのことである。そこで、どのような変化が起こるかがとわれる。このとき、いままで、「読む」ということの視点から、主に、電子図書館は考えられてきたように思う。オンライン配信できれば、いつでも、どこでも、読書、ということが可能になる。この観点では、デジタルミュージアムも同様
2010-03-05 當山日出夫 国会図書館でのシンポジウムとか、あるいは、京大での「文化とコンピューティング」などで、感じたこと。日本では、グーグルに対する対抗意識が希薄なのではないか。 いや逆だろう。ヨーロッパの方であると、はっきりと、対グーグル(アメリカ)という意識を明確に持っている。自分の国の文化遺産、文化資源は、自らの責任でデジタル化して発信するのだ、という強固な意志を感じる。 これにくらべると日本はどうだろう。国会図書館の大規模デジタルライブラリ構想とはいっても、グーグルブックサーチに対抗して、自国の文化遺産(書籍)を、自国の手でデジタル化するのだ、という意識があるか、どうか。どうも、これまでの、グーグルブックサーチをめぐる日本での議論は、そういう方向ではないように思えてならない。 それから、この観点から重要なこと。ヨーロッパが、対グーグルということで、自らの文化資源をデジタル
先月の31日(2009年10月31日)に日本のサブカルチャー研究の礎(いしずえ)になるであろう重要な図書館がオープンした。もうニュースなどで知ってる人が多いとは思うが、コミケの神様、主に故・米沢嘉博氏の蔵書を元に創設された「米沢嘉博記念図書館」である! どういう図書館か、また開館までの経緯などは「米沢嘉博記念図書館」のホームページを見ていただければ、ほとんどのことはわかるであろう。また、ニュースサイトでもいろいろとレポートされている。 ただマンガ図書館などは、今までにも「現代マンガ図書館」や「京都国際マンガミュージアム」などがあり、マンガ専門でなくとも、蔵書数でいえば「国立国会図書館」などももちろんマンガは扱っている。 しかし、どの図書館も「成年コミック・雑誌」に関して言えばまだ非常に弱い部分があり、我がサイト「えろまんがけんきゅう(仮)」としては、「米沢嘉博記念図書館」もしくは、現在計画
明治大学は22日、アニメやマンガ、ゲームなどのサブカルチャー資料を一堂に集めるアーカイブ施設「東京国際マンガ図書館」(仮称)の設立を正式に発表した。14年度をめどに、計200万点を収蔵する施設を、駿河台キャンパス(東京都千代田区)内に設置する計画。 「東京国際マンガ図書館」は、マンガ・アニメ・ゲームなどの関連資料を保存し、学術的、文化的に運用することが目的としており、関連図書や雑誌、同人誌をはじめ、マンガ原稿やアニメの原画・セル画、アニメやゲームのソフト、ゲーム機本体、キャラクター商品やフィギュアなどを収蔵する。資料保存以外にも、展示を行うミュージアムやシアター施設も併設し、コミックマーケット準備会や現代マンガ図書館(東京都新宿区)などとも協力しながらの運営を検討している。 また、31日にはマンガとサブカルチャーの専門図書館「米沢嘉博記念図書館」が先行施設としてオープン。明治大学出身のマン
10/16(金)に第3回資料保存シンポジウム「資料保存を実践する―事例から学ぶ現場の知恵―」が江戸東京博物館で開催された。 NPO法人共同保存図書館・多摩 理事・事務局長の齊藤誠一さんによる事例報告「共同保存図書館の実現に向けて―多摩から提案する資料保存のしくみ」の中で、驚くべき話があったので、まずは急遽お知らせ。 その内容とは- 10/9(金)に、東京都立中央図書館から都内各自治体の図書館長宛にFAXが送信された。 実際に直接そのFAXに目を通してはいないので詳細は不明ながら、斎藤さんの話から内容をまとめると、概ねこんな感じであった。 ・多摩図書館が所蔵していた多摩地域資料約7万冊と雑誌など併せて、 計約8万冊を処分することにした。 ・引き取りたい館は、10/23(金)までに直接取りにくること。 通達から2週間ということは、図書館の稼働日で言えば約10日間。 引き取る側の負担で取りに行く
2009-08-29 當山日出夫 以下、思いつくままに。 ARGフォーラム「この先の本のかたち」に関連して、いろんなブログなどを読んでみる。そうすると、本というものが、二つの方向から見えてくる。 ARG http://d.hatena.ne.jp/arg/20090829/1251531817 第一には、本を情報のメディアとしてみれば、デジタル化することによって、解体できる。「1冊の本」から、特定の文章を抜き出して再構築が可能になる。いってみれば、デジタル化された書物が具体化することによって、本が「編集」されたものである、ということが、実感として分かってきた。 この意味では、出版社の役割というのは、まさに「編集」の仕事である、ということになるのかもしれない。 この一方で、逆の視点がある。 第二に、本をたくさん集めると、おのずと秩序がある。そして、そのことによって、ある「知」を形成するという
2009/05/26 當山日出夫 今日は、「休校」なので、清水義範の『翼よ、あれは何の灯だ』を読みながら、いろいろと書いている。 現在、「デジタル」の時代になって、「デジタル化できるもの/できないもの」という問題設定がなされるようになった。先日の東大でのCH82研究会における、モーションキャプチャをめぐる議論は、まさに、この点が大きな争点として、活発な議論があった。(このことは追って書きたい)。 では、これ以前はどうだったろうかと思い返してみる。文字/無文字、あるいは、文字があっても文字化されない、というような問いかけはあったと思う。しかし、ダイレクトに、 書物になる知/ならない知 というような根源的問いかけが、本格的になされただろうか。あるのかもしれない。しかし、現在の上述のような「デジタル」をめぐる議論のように、一般的な問題提起として、共有されているとは思えない。 ということは、図書館
このサイトは、平成15年に公開した「蔵書印の世界」をリニューアルしたものです。内容は当時の記述に基づいています。従来のサイトは、国立国会図書館インターネット資料収集保存事業(WARP)でご覧いただけます。 蔵書印は、書物の所蔵を明らかにするために蔵書に捺した印影です。中国で早くに発生し、それが日本に伝わってきたとされています。しかし、日本最古の蔵書印は奈良時代にまで遡ることができますが、いつ、どのように伝わったかは明らかでありません。ともあれ、以来、江戸時代中期までは社寺や特権階層の者など、極めて限られた人々しか使用することはありませんでした。ところが書物が一般に流通するようになると、学者や文人の蔵書家が出現し、趣向を凝らした多種多様な蔵書印が考案され、用いられるようになりました。 蔵書印にはさまざまな形態があり、それらを使用した時代や機関の種類、個人であれば職業、身分などによってそれぞれ
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