医薬品が体内で効果を示す仕組みは多種多様ですが、1種類の医薬品が単一の働きをするとは限らず、「ひとつの薬なのに、まるで異なる疾患に効く薬」があります。今回は、「脳の疾患であるパーキンソン病」と「感染症であるインフルエンザ」という、全く関係のなさそうな疾患に対して効果を示すアマンタジン塩酸塩(商品名:シンメトレルなど)について説明します。 アマンタジン塩酸塩の効能・効果 アマンタジン塩酸塩は、次の3つの効能・効果を持ちます。 パーキンソン病(パーキンソン症候群)脳梗塞後の意欲・自発性低下の改善A型インフルエンザ感染症 まずはこの3つについて、疾患の特徴や症状を説明します。 1.パーキンソン病(症候群) パーキンソン病は、脳の中の黒質ニューロンという神経細胞が変質することにより脳内物質であるドパミンの量が減少し、運動機能を始めとする様々な機能障害をもたらす疾患です。ドパミンには神経細胞間の信号