かつて訪れたことがある都市のなかで、一番強く印象や記憶に残っているものを思い出していただきたい。そのとき、どの都市のどういう光景がイメージされただろうか。 こんなことを訊くのはほかでもない。本書を読みながら、わたしたちは、日頃都市というものをどうとらえているだろうかと思ったからだった。 或る人は、都市のランドマークをイメージするかもしれないし、行きつけのお店の周囲を思い出すかもしれない。あるいは、その都市の地図やGoogle Earthで見た風景を思い浮かべる人もあるだろう。 いずれにしても、巨大な都市を一望するのは難しい。もちろん、上空から鳥瞰すれば全体を視野に入れることはできる。だがそうすると今度は具体的な細部がわからない。かといって、都市のなかに立つと、全体がわからない。「同じ都市でもちがう方向から眺めるとまったく別の都市に見える」と述べたのはライプニッツだが、どうも人間の身の丈から