「かわいい電車ブームっていうのが確かにあったよね」という話を先日、人としていた。お相手は長らく鉄道書籍に携わっておられる方で、その仕事の関係上、鉄道趣味の流行に詳しかったりする。 「かわいい電車」というのは、主としていわゆる一両編成のローカル線を指した言葉である。製造から年数の経過した「レトロ」な車両がゆっくり走る姿、あるいはその本数の少なさなどをまとめて「かわいい電車」と表現していたのだ。もっとも正確には、「かわいい気動車」といったほうがより適切ではあるが、ここはあえて当時の言葉を拝借しておく。 電車ブームの全盛期は、おそらく2010年ごろで、雑誌の旅特集でも大々的に取り上げられていた。当時のコンセプトは、「忙しい都会での日常を離れて、のんびりした列車で非日常を味わいましょう」というものだった。「1時間に1本なら、1時間自由です」というコピーをつけた雑誌を見たこともある。 のんびり列車を