森村誠一 数年前、作家(小説家)志望の人口は五百万人と推定された。だれが、どのようにして推定したのかわからないが、かなりいいかげんな数である。だが作家予備軍が多いことは確かである。 日本の場合、日本語が読み書きできれば、だれでも自分の人生という小説は書ける。だが、小説が日記と異なるところは、読者の存在である。読者なき小説は、小説とは言えない。小説に限らず、すべての創作物は受取り手(レシピエント)がいて、初めて成立する。それも少数ではなく、ある程度のまとまった受取り手に支持されて成立する分野である。 人間の持つ大きな欲望の一つとして、表現欲がある。生存するための食欲、繁殖のための性欲と異なり、表現欲が満たされなくとも生存はできる。だが、一応生存のための条件が満たされると、人間は自分が社会において認められていることの証明を求めるようになる。自分が社会の確実な存在としての証明。その証明が表現欲や
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く