ほろ酔いで夜道を歩いておったら、前方から駆けて来た青年が道に転がっていた石を蹴り飛ばしてしまったようだ。その石は不運にも俺の顔めがけて一直線に飛んできた。実に不幸な出来事なのだが、どういうわけか反射神経が人より劣る上に酔っ払いである俺の手が自然に動き、顔面に被弾する直前の石をパッと受け止めた。青年は自分の仕出かした事に驚き、更に俺の超かっこいい動きに驚いたため一瞬行動が遅れたようだったが、すぐに俺のそばに寄ってきて「申し訳ありません」と何度も頭を下げた。わざとやった事でもないので俺は「大丈夫。でも、気をつけるんだよ」と言って青年を許し、再び歩き始めた。 とぼとぼと歩いていると、ふいに「酒に酔っていたので一時間ぐらい気付かなかったが、さきほどの俺はメチャメチャかっこよかったのではないか」という気がしてきた。あの青年は俺を何かの達人だと思ったかもしれない。何の達人かは知らないが、何かの。 高揚