ヴォーカル。神がつくった至高の楽器。その座がしばらく前から脅かされているらような気がする。音声合成システム、ボーカロイドの影響は、だんだんと拡がり、看過できないレベルになっている。ヴォーカルと聞くと、この二曲が思い浮かぶ。 マーラーの交響曲『大地の歌』。地上の悲しみを唄う酒宴の歌。テノールのヴォーカルがこれ以上はない絶望と地獄を切り裂いて始まる。生は闇だが、死もまた闇、と絶唱する。 マーヴィン・ゲイの『ホワッツ・ゴーイン・オン』。反戦へのメッセージを、人類の尊厳を賭けて、これ以上はない繊細さと滑らかさで歌う。マーヴィンの悲劇的な終わりを知っても、ヴォーカルの到達点として、羽のように、滑らかに聞こえる。 改めてこの二曲を聞いてみると、当分、ヴォーカリストの王座が安泰だと分かる。 1:ボーカロイド前史 ボーカロイドを最初に聞いたのは音楽の授業だった。当時のボーカロイドは、ヴォーカルと比較できる
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