川田順造(文化人類学) 文化人類学の巨人・川田順造。パリ大学で日本人としては初めてアフリカ研究の博士号を取得、60年代よりアフリカに9年間滞在し、フィールドワークを重ねてきた。世界を驚かせたのは、西アフリカのブルキナファソに住むモシ族の、文字を持たない社会の研究だった。そこには豊かな“音”の文化があった。モシ族は太鼓の音の高低を精妙にたたき分けて民族の歴史を物語る。川田は、文字を持たない彼らは遅れた文化ではなく、人類文化の別の形なのだという。そしてむしろ印刷技術やインターネットで文字に支配された我々の方こそ、彼らに学ぶべきことがあると説く。人類は文字によって知恵を保存し洗練することを可能としたが、一方で一人ひとりの固有の声が持つ「責任」や、「コミュニケーション」の質の低下を招いているという。 太鼓がしゃべり、「こんにちは」「さようなら」「ありがとう」といった表現が日本語よりはるかに複雑に