この世で起きていることは、 たとえばラブホテルの外で起きていること。 外の世界が滅んでしまっても、 ラブホテルのなかは安らかだ。 わたしとあなたはそれを知らないで、 うつらうつらしたりしている。 ラブホテルの外では人が死に、 人が苦しみ、人が死に、 絶望の底でのたうちまわっていても、 わたしとあなたはそんなことを知るよしもなく、 くだらないジョークで笑いあったりしている。 それでもいつかは、 ラブホテルの休憩時間も終わってしまう。 外は雨が降っているか、寒風が吹いているか、 出てみなければわからない。 いつか人間は外に出なくてはならない。 そのときが、今年なのか来年なのか、 あるいはもう通り過ぎてしまって取り返せないのか、 だれも知りはしないのだ。 おれは今年、 外に出るのか出ないのか、 おれも知りはしないのだ。