淀――。この言葉を聞いて、競馬ファンが思い浮かべるのは3コーナーの下り坂。菊花賞の舞台でもあり、これまで7頭の三冠馬が生まれ、まもなく8頭目が生まれようとしている……。 と、これは京都競馬場のお話。そして競馬ファンの間で通称となっている“淀”は、京都競馬場一帯を指し示す地名であり、最寄り駅の京阪電車の駅名でもある。京阪本線淀駅と京都競馬場は連絡歩道橋で直結しており、パドックのすぐ裏手を京阪電車の高架が通るというまさに絶好のアクセス。淀駅=京都競馬場の駅、といって過言ではないのである。 だが、歴史をたどってみると、淀駅の開業は1910年のこと。ところが、競馬場がこの地にやってきたのは1925年である。つまり、15年も駅の方が先輩なのである。「淀」という言葉で競馬場をだいいちに連想するのは、先輩たる駅に失礼なのかもしれぬ。そこで、三冠馬たちに敬意を表しつつ、淀駅の“日常”に何があるのかを見に行