「特撮の神様」円谷英二が生み出したのは、ミニチュアセットと着ぐるみ怪獣を活用した独自の手法だった。海外からも愛される日本の特撮文化の歴史を検証し、その独自性と今後の可能性を探る。 海外からリスペクトされる「特撮」 日本のポップカルチャーの中でも、「特撮」は独特の手触りを備えた魅力的なジャンルだ。ミニチュアやスーツなどリアルでディテール豊かな被写体を空想の力で別ものに見たて、驚きを解放するカタルシスには、直接皮膚を刺激するようなところがある。 「特撮」という用語は本来「特殊撮影」の略だったが、現在の意味は大きく以下の2つとなっている。 (1) 通常では撮影困難な状況や被写体を映像化する技法 (2) ゴジラやウルトラマンなど特撮技術を駆使したキャラクター映像ジャンル 前者については1990年代中盤以後、デジタル技術の急速な発展と低廉化によってCGが中心となり、ミニチュアワークなど伝統的な特撮技