低賃金、貧困、引きこもり、孤独死、自殺……残酷な世界の現実と、「やればできる。私は変われる」といった自己啓発の福音から離れ、幸せの掴み方を探った名著『残酷な世界で生き延びるたった一つの方法』(橘玲著、幻冬舎文庫、2015年刊)。今なお衝撃の本書から、試し読みを一部お届けします。 * * * 幸福とはなんだろうか。 チベット仏教の活仏(菩薩の化身)ダライ・ラマ十四世は、「幸福とは人生の目的である」と端的に定義した。 開拓時代のアメリカの作家ナサニエル・ホーソーンは、「幸福は偶然やってくる。追い求める対象にしたら、決して得られない」と嘆いた。 ドイツの哲学者ショーペンハウアーは、「幸福とは奇怪な妄想で、苦しみこそが現実である」という不吉な言葉を残した。 ぼくの好きなのはアメリカの作家マーガレット・リー・ランベックの、「幸福とは旅の目的ではない。旅の方法である」という箴言(しんげん)だ。