フランス料理の声価は、世界第一のごとく誇大に評判され、半世紀以上に渉って、われわれ日本人を信じさせてきた。フランスに派遣された役人たちによってである。考えてみると、だいたいみながみな若輩で、もとより日本料理というものが、今までにどんなに発達してきているか、てんで知る由もない連中ばかりであったからだ、とわれわれが想像して慨歎(がいたん)するのも、あながち誤りではなさそうである。 上は大使、公使、下は貧乏画家青年、その皆が日本美食を通暁するはずのないことはいうまでもない。日本料理の真価というものがどこにあるか、ぶつかったこともなければ、気にもんだこともなさそうなひとたちばかりである。その若人によって、むやみと誇大に、フランス料理は日本人に宣伝されてしまったらしい。いわゆる若気の至りというやつである。それが今回の僕の外遊によって、憚(はばか)りながらほぼ明らかになった。僕のテストでは、その料理の