2013年3月、ミャンマー中部の都市メイッティーラで仏教徒とイスラム教徒の対立から虐殺が発生した。モスクと、そのまわりの建物が焼き尽くされた惨劇の跡/左:969運動を率いる高僧アシン・ウィラス Getty Images (left center), AFP-JIJI (background) たわわな果実さながらのオオコウモリを枝々にぶら下げた熱帯樹のでこぼこ道を三輪タクシー──トゥクトゥク──がガタゴトと市街中心部に向けて走っていく。海からどんより漂ってくるもやの向こうに銃を提げた警備兵の姿がおぼろげに浮かび上がり、トゥクトゥクの湿気た帆布製の日よけに隠れようと私は後部席で身を縮め、帽子を目深にかぶり直した。ここはミャンマー最西部のラカイン州、ベンガル湾とバングラデシュ国境にほど近い州都シットウェ。この地で深刻な人道被害が発生し、世界の注目を浴びるに至った。多くの人がその惨状をこう表現す