厚生労働省は原発事故後の食品中の放射性物質に係る基準値の設定案を定め、現在意見公募中である。原発事故後に定めたセシウム(134と137の合計値)の暫定基準値は500Bq/kgであった。これを生涯内部被曝線量を100mSv以下にすることを目的として、それぞれ食品により100Bq/kgあるいはそれ以下に下げるという基準を厳格にした案である。私は以下の理由で、これに反対する意見を提出した。 震災後の日本人に最も必要なものは、絆の復活だろう。事故直後から、あえて福島産の農産物を買おうとする運動も起きた。一部の消費者は、被災地の食品を買うことに価値を見出している。基準値を引き下げることは、農水省が掲げる「食べて応援する」活動を否定することに繋がる。 賠償金を払えば新たな被災者ができないと、読者は思われるかもしれない。しかし生業を否定された不幸はお金では償われない。また、農家や漁師が補償されるとしても