イビチャ・オシムは、いつだか、日本代表の試合がPK戦にもつれ込んだ際に、その結末を見ぬままグラウンドを去ったことがある。正確には覚えていないが、PK戦というものがただ勝敗を決めるためだけに存在する残酷な取り決めであること、そしてそのPK戦の勝敗を決するのは「時の運」としか呼ぶことのできないものであること、そして、そうであるがゆえに、その結果はチームのパフォーマンスとは全く関係のないもので、監督はそこになんの関与もできないこと、などを挙げて、オシムは自身の行動の理由としたのだったと記憶する。 当然その行動は物議を醸し、監督の責務を放棄したといった批判が飛び交ったような気もするが、オシムに言わせれば、PK戦という取り決めは、彼が考える「サッカー」というものとはなんの関係もないもので、「PK戦」の方こそがサッカーというゲームであることを放棄した「まったく別のゲーム」なのだ、ということになるのだろ