世界を蹂躙された子どもは「日の丸プラットフォーム」の夢を見るのか 大塚英志 清水眞弓(しみずまゆみ)という作家の小説に『花冷え』がある。1964年、七曜社からの刊行である。巻末には文芸批評家の村松剛(むらまつたけし)の解説があり、その記述から著者の清水と村松は、編集者と著者の縁であったと知れる。余談だが、村松の授業をぼくは筑波大学時代に受けている。第二外国語のドイツ語の講義で、ぼくは一度も出席せず、試験もドイツ文学について知っていることを記せといった内容だったので、グリム童話やフォルクスクンデについて雑な文章を書き、単位をもらった記憶がある。そのため、ぼくはドイツのアルファベットさえおぼつかないのだが、そういう無能な学生相手の講義はさぞかし憂鬱(ゆううつ)であったのだろう、ただ、寡黙で陰鬱な印象だけが漠然とあるが、清水に対してはひどく優しい。 〈清水さんとはもう二年以上のおつきあいになる。
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