→紀伊國屋書店で購入 本書評は、早瀬晋三著『歴史空間としての海域を歩く』または『未来と対話する歴史』(ともに法政大学出版局、2008年)に所収されています。 2005年2月、竹山道雄『ビルマの竪琴』の舞台となった降伏日本軍人の収容所のあったムドンを訪ねた。ミャンマー(旧ビルマ)の首都ヤンゴン(旧ラングーン)から車で10時間ほどのところにある。限られた時間で、収容所跡を確認することはできなかったが、戦後ビルマに留まることになった主人公の水島を想像させる「謎」の日本人がいたことを知った。終戦後、南の方からやってきたこの日本人医師は、ムドンに住みつき、数年前に亡くなったという。4人娘のうちのふたりに会うことができたが、実の娘でさえ、なぜ父親がムドンにやってきたのか、日本のどこの出身なのか、わからなかった。東南アジア各地で、いろいろな理由で現地に留まった「未帰還日本兵」の話を聞くことは、それほど珍