沖縄県尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で、海上保安庁の撮影したビデオ映像が流出した問題は、福岡高検が捜査に乗り出し、海上保安庁が東京地検と警視庁に告発したことで、刑事事件となった。不正は法と証拠のもとに明らかにされるのが当然である。 だが、事の本質は、中国漁船の側に非があることを明確に映し出している映像を、政府が国民の目から隠し続けたことにある。不法な形の流出ではなく、政府の意思としての全面公開が求められることに変わりはない。 仙谷由人官房長官は、国家公務員の守秘義務違反の罰則を強化する考えを示した。対処すべき優先順位のすり替えである。まず急ぐべきは映像の公開と、中国の反発を恐れて非公開を続けた弱腰外交を反省することだろう。 そもそも衝突映像は国家機密だったのか。海保は当初、ビデオ公開に前向きだったとされる。事実、平成11年に奄美諸島沖で起きた北朝鮮工作船との銃撃戦では直後にビデオが公開され、