「それでは朝礼を始めます」 教卓に出席簿を置き、教室を見回す。子供達はいつも通り、総じて怠そうな顔をしている。くあり、と欠伸をする者も多い。せめて隠せよこの野郎、とはとても口には出せない。 海堂(かいどう)夏樹(なつき)は、一年B組の担任教師だ。名前から分かる通り、夏生まれだ。とはいえ、運動とはほぼ無縁の生活を送ってきた。のらりくらりと日々を生きていたつもりだったのに、どういう訳か、高校教師なんてものになってしまった。 本日も異常無し。メモ欄にその旨を記入したところで、不意に違和感を覚えた。 ──なんだか、足りない、ような。 「せんせー、早くしてよー。次、俺ら移動なんだけどー」 「あ? あ、あー、悪い悪い」 「もー、夏バテー? 勘弁しろよなー」 やけに間延びした口調の子供に、悪い悪い、ともう一度繰り返し、へらりと愛想笑いをする。教師は気を遣うことが多くて、大変だ。 出席簿に視線を落とす。先
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