アクリルケースに入ったマシンガン「M60」。鈍く光る銃身を前にすると一瞬ギョッとする。だがよく見れば、光沢に違和感を覚える。金属なのに金属ではない不思議な質感。頭が混乱する。アーティスト、長谷川学が作る世界に引き込まれる瞬間だ。 氏は「フロッタージュ」という版画技法から派生したテクニックを使い、金属の質感を紙と鉛筆だけで表現してみせる。ディテールにこだわり抜いた実物大の銃は本物にしか見えない。独特の作品はどうやって生まれたのか?(撮影:加藤甫) 「こする」ことで表現できる世界 「フロッタージュ」の「フロッター」とはフランス語の「frotter(こする)」に由来する。凹凸のあるものに紙をのせ、鉛筆やクレヨンで模様を写し取る技法。子どもの頃、10円玉の上に紙をのせて鉛筆でこすって表面のデザインをコピーしたことがある人もいるだろう。いわゆる「こすりだし」だ。長谷川氏がこの技法の面白さに気づいたの