「横沢伝声器」と名付けられた衛星電話。紙には「事務局長さんが天国で手伝いしています」と(21日、岩手県陸前高田市で) 東日本巨大地震の大津波で全壊した岩手県陸前高田市の県立高田病院のスタッフが、1台の衛星電話を手に、市内の別の場所に設けた仮設診療所で被災者の診療を続ける。 「横沢伝声器」とスタッフが呼ぶこの衛星電話は、今月末で定年退職する予定だった病院事務局長の横沢茂さん(60)が、命をかけて津波から守った。有線電話や携帯電話の不通が続く中、薬品調達や救急患者の情報収集の〈命綱〉となっている。 11日の地震発生直後、鉄骨4階建ての病院は入院患者や医師のほか、避難してきた住民ら100人以上であふれていた。「大きな津波が来るぞ」。数分後、あちこちで声が上がった。 3階にいた事務員の冨岡要さん(49)は窓の外を見た。10メートルを超える大きな津波が迫っていた。1階事務室まで階段を駆け下りると、横