(この記事は2004年8月6日に書かれました) 福本伸行は現存の漫画家の中ではトップクラスに内容の濃いマンガを描く人だと思う。『カイジ』や『アカギ』『天』などのギャンブル系のマンガもそうだが、彼が原作の、かわぐちかいじ画『生存』や『告白』のようなサスペンスまで極めて高い力量を見せている。 ぼくは常々「言葉を奪われた人々」のために語ることこそが文学における現在的課題ではないかと感じていた。 90年代後半以降ずいぶんと自分史を語りたがる連中が増えて、それは五体不満足な人であったり、昔はヤンキーだった先生だったり、元AV女優のタレントだったりして、文学もまた援助交際をする女子高生やひきこもりになった人々にスポットを当てたりと新聞の投書欄で取り上げられるような話題を扱うようになって、ずいぶん文学とはお手軽なものになったものだという印象を強く受けた。 彼らが自分を語りたがる背景には、私を理解して欲し