学者や評論家が政治を評論する時、口を開けば「金のかかる選挙が諸悪の根元」と言う。選挙に金がかかるから政治献金が必要となり、それが金権スキャンダルの種となり、国民の政治不信を生み出す。一方で政治に意欲を持つ人間を政治の世界から締め出し、政治が私物化されて能力のある政治家が少なくなる。もっともらしい理屈だが半分も当たっていない。「金がかからない」を口実に民主主義に最も大事な選挙が国民から遠ざけられている。 金のかからない選挙の典型は英国である。英国の選挙は政党のマニフェストを選ぶ選挙で、決して候補者を選ぶ選挙ではない。従って候補者には自分を売り込む宣伝カーもポスターも選挙事務所も要らない。政党の政策パンフレットを持って戸別訪問するだけである。有権者にマニフェストの内容を説明し、政党への投票を呼びかける。有権者が意識する個人は説明に来た候補者ではなく、政党の党首すなわち次の首相候補である。だか