菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki 連載第7回 イップスの深層~恐怖のイップスに抗い続けた男たち 証言者・一二三慎太(2) (前回の記事はこちら) 夏の大会の直前、オーバースローからサイドスロー転向を決意した一二三慎太 東海大相模高のブルペンは、マウンドが横に4つ並んでいる。一二三慎太(ひふみ・しんた)は、その右から2番目のマウンドに立ち、投球練習を始める。しかし、そのボールは指先に引っかかり、ブルペンの左端にあるホームベースへと向かっていった。 「僕自身は普通に投げているつもりなんですけど、ここ(指先)が言うことを聞かなくて大変でした」 たった1球だけなら、練習中の笑い話になっただろう。しかし、一二三の投げるボールは何度も指に引っかかり、見当違いの方向に飛んでいく。右肩痛に端を発して投球フォーム