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ブックマーク / www.nikkei-science.com (5)

  • イオンで作る量子コンピューター

    超弩級の能力を持つと期待される量子コンピューター。原子や光子,人工の微細構造にデータを保存して処理する設計が考えられている。最も進んでいるのが捕捉イオンを操る研究だ。イオンにデータを蓄え,他のイオンに転送できるようになっている。開発を阻む原理的な障害はない。 私たちが行っている捕捉イオン実験では,電気的に浮揚させた個々のイオンが小さな棒磁石のように振る舞う。各々の棒磁石の方向(上向きと下向き)が量子ビットの1と0に対応する。レーザー冷却(原子に光子を散乱させることで原子の運動エネルギーを奪う方法)によって,捕捉トラップ内のイオンをほぼ静止させる。 これらのイオンは真空容器中にあるので周囲の環境からは分離されているが,イオンどうしの電気的反発による強い相互作用を利用して「量子もつれ」を作り出すことができる。量子もつれは個々の量子ビットの観測結果が相関し合う現象で,粒子の間を結ぶ“見えない配線

    イオンで作る量子コンピューター
  • 麻酔の科学 脳に働くメカニズム

    現在使われている全身麻酔薬は,中枢神経に作用する薬の中でも最も強力なもので,危険を伴う場合もある。そのため,麻酔科医は患者や手術の内容に合わせて麻酔薬の投与量を調節し,手術中の不測の事態を回避するためにざまざまな機器を使ってモニターする。しかし,細心の注意を払ってきたにもかかわらず,麻酔が引き起こしたとみられる死亡者の割合はほぼ横ばいだ。その最大の原因は,今の全身麻酔薬は経験的に使用されてきたもので,その作用のメカニズムがはっきりとはわかっていないことにある。 麻酔の主な要素は鎮静,意識の消失(催眠),体が動かなくなる(不動),痛みの消失(痛覚消失),麻酔中の記憶の消失だ。では,どのようにして麻酔薬はそうした状態をもたらすのだろうか。麻酔の研究によって,これら個別の効果がそれぞれどのように生じるのか,メカニズムが徐々に解明されつつある。麻酔薬は種々の神経細胞(ニューロン)群と非常に特異的に

    麻酔の科学 脳に働くメカニズム
  • 信頼のホルモン オキシトシン

    人間どうしが社会的にうまく機能するには,信頼が不可欠だ。しかし,新たに知り合った人を信頼すべきかどうか,私たちはどのようにして決めているのだろうか? 脳で作られるオキシトシンという神経伝達物質が信頼を築くうえで重要な働きをしていることが,「信頼ゲーム」という実験によってわかった。オキシトシンの機能や他の重要な脳内物質との相互作用をさらに研究すると,自閉症など社会的相互作用の不全を特徴とするいろいろな疾患について多くのことがわかってくるだろう。 オキシトシンはたった9個のアミノ酸からできたペプチド(小さなタンパク質分子)で,信号を伝える神経伝達物質として働いている。また血中に漏れ出して脳と離れた組織にも影響を及ぼすので,ホルモンでもある。オキシトシンが果たす役割としては,授乳期の女性に母乳の分泌を促すことと,陣痛の誘発が最もよく知られている。その他の微妙な効果は検出しにくかったが,動物を対象

    信頼のホルモン オキシトシン
  • 狂犬病からの生還

    2004年,ミルウォーキーにあるウィスコンシン小児病院の私たち医師団は,コウモリに噛まれて狂犬病になった15歳の女子高生の命を救った。患者を昏睡状態に誘導したうえ,狂犬病ウイルスを抑える薬や脳を保護する薬を投与した。 この治療法を他の患者に適用して成功した例はまだない。しかし,私たち医師団が取った措置を科学的に検証すれば,この恐ろしい病気を治療する道筋が開ける。発展途上国ではいまだに狂犬病が多く発生しており,費用があまりかからず信頼性の高い治療法ができれば多くの人命が救われるはずだ。 狂犬病は最も古くから恐れられてきた病気のひとつだ。脳がやられ,不安と恐怖感,痙攣(けいれん)が生じる。飲しようとすると,喉が痙攣して苦しい。やがて麻痺がやってくる。ワクチンによって病気の進行を防ぐことは可能だが,狂犬病の動物に噛まれた後すぐに接種しないと望みはないと考えられていた。噛まれてから2カ月以内に症

    狂犬病からの生還
    basyou2525
    basyou2525 2013/04/22
    狂犬病][動物][medical][医療][知識]
  • 動物で育てるヒトの臓器

    バカンティとランガーらが1990年代に提唱した組織工学は,あくまでも生体の外で移植用の組織や臓器を作ろうというアイデアだ。金属や樹脂,セラミックスで作る人工関節や埋め込み型人工心臓などとの違いは,材料として生きた細胞を使っている点にある。組織工学の成否を握っているのは,発生段階や自然治癒のプロセスをどこまで生体外で再現できるかだ。 幹細胞を使った再生医療のうち,細胞シート(皮膚や角膜など)はすでに使われているし,年内にも米国で胚性幹細胞(ES細胞)を使った脊髄損傷の臨床試験が行われる予定だ。だが,22ページからの記事にもあるように,生体外で細胞を培養して丸ごとの臓器を作るのはまだ先になる。生体内で起きていることを再現するのが難しいのなら,いっそ生体の力を借りて臓器を作ろうというアイデアがある。 7月中旬,フルオープンする自治医科大学の先端医療技術開発センター(CDAMTec)は,医学研究用

    動物で育てるヒトの臓器
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