――転職、結婚、出産。 どれも35歳を過ぎると、ハードルが上がる。 ビフォー35歳(B35)は35の壁を前に、 何を優先すればいいか迷う。―― その日は朝から、電話も鳴らなかった。四つの机と接客スペースからなる小さなオフィスは、いつも以上に静かだった。 「いったん、事務所を閉めようと思うんだ」 司法書士のケンジさん(30)が切り出すと、事務所を共有する会社経営者の友人もうなずいた。苦しい状況は、お互いにわかっていた。 20代の頃、ケンジさんはとにかく稼げるようになりたかった。大学時代はトラックの運転手やカード会社のアルバイトをし、月収が50万円近くあった。それをネタに就職活動を行うと、都市銀行から内定を得た。 任される客や配属される支店を見れば、自分の評価がわかる。上司にも取引先にも可愛がられたが、入社して2年した頃、迷いが生まれた。このまま会社に与えられたレールの上を歩いていて、