死後の手続きは大変だ。だが、「その前」の話のほうも深刻かもしれない。日常のすべてが、いつの間にか制限されるのだから。カネもおろせないどころか手術も受けられない、その実態を明かす。 愕然とした窓口の対応 「死後に、銀行口座が凍結されるというのは知っていました。でも、私はこうして生きているんですよ。なぜ、私が自分の預金を使えなくなってしまったのか……」 こう憤るのは、都内在住の西口博子氏(72歳・仮名)だ。認知症予備軍である「軽度認知障害」(MCI)の症状が見られ、ときおり物忘れが出る。 だが程度は比較的軽く、誰の助けもなく、日常生活を送っている。本誌の取材に対しても、問題なく会話できている。 ところが昨年の秋、自宅近くの銀行支店で、突然、西口氏の預金口座の入出金が「凍結」された。 「通帳を紛失してしまったので、再発行をお願いしたんです。すると、窓口の人が上司としばらく話したあと、私にこう告げ