子どもの頃、ご近所に「お茶やさん」という家がありました。 お茶やさんといってもお店ではなくて、お茶畑と煎茶の製造工場があって、今頃の時期になると私たちご近所にもわけてくれました。もちろん代金を払って買うのですが、ずいぶん安くしてもらっていたように思います。お茶の産地ではなかったんですが、なぜか一軒だけそうでした。 煎茶の工場には子供は入れてもらえないんですが、工場の周辺はとても広かったので子供の遊び場の一つで、よくかくれんぼやかけっこをしました。遊び場を提供してくれていたのは、今から思えばお茶やさんにも子供がいたせいでしょう。 茶畑というのは、人間からすれば「お茶を栽培している木」なわけですが、木からすれば立派なお茶になろうなんて思っているわけでなくて、まわりの雑木林の木や草と同じで、寒い冬から春、初夏へと、暖かな太陽の日差しがうれしくてすくすくと育っているんだろうなと思います。 だけどお