スコットランド在住の経済学者、林貴志氏が『能力が「自己責任」なら、成果主義は理にかなう』と、企業の人事担当者が飛びつきそうなタイトルで広く大衆を釣りつつ、厚生経済学を平易に紹介している。 この種の一般書としては「幸せのための経済学」があるが、ウェブで公開された日本語で読める文書は他に無いように思う。専門外だけれども経済学が何か気になる人には、一読の価値がある。 さて、こういう文書を読むと、本題とそれた事を考えたくなる。「正解」あるいは「経済学的に正しい」公平性概念などというものはあり得ないと前置きされているのに、反例的な事を考えてみたい。 砂漠で遭難して救出を待つ間に、水を配ることを考えたい。A、B、Cの三人がいて、それぞれ生存に必要な水が100L、50L、60Lと異なる。水を飲む事に効用があり、三人は生存に必要以上の水も喜んで飲む。水は限られているが、全員の生存が可能な量が210Lある。
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