1 HIV 問題から何を学ぶべきか 郡司篤晃 聖学院大学 教授 1. 背景 1.1 国際的視点から見た構造問題 世界の合意事項? 1975 年、WHO 総会は人の血液と血液製剤について決議を行い、参加各国に次の ような勧告をした。非営利の国の輸血サービスは、その国の必要に応じて、無償の ボランティアからの献血で行うべきである。そして、「そうすることによって、ア ルブミン、血液凝固因子、免疫グロブリンの製造に必要な血漿のすべてではなくて もほとんどを供給できるであろう」。しかし、この認識は甘かったといわざるをい ない。血漿採漿は国の血液事業の一部であるとされたが、血漿に対するニードが他 の血液成分よりも遥かに上回ってきたことから、血漿の確保が血液事業の主要なも のになりつつあった。そして、各国の技術開発の差や事業の体制の違いから生じた 不足分を補うかたちで、アメリカの血液製剤企業が世界の製剤