第三はこれまでよりはマシな話で、現97条の定める基本的人権の不可侵性が消えているとか、現99条の憲法尊重擁護義務の名宛人に国民が加わっていることから立憲主義の理念が損なわれているとするもの。 この点について私自身はアンヴィヴァレントであり、つまり一方で「立憲主義」を知らないというのはいかがなものかともちろん思うのだが、他方別段それは万古不易の理念でもないので、それだけを捉えて批判しても意味がないと思い、しかしひっくり返すとそんな意味のないところで騒動の種を蒔くなよとも思うわけである。 どういうことか。第一にそのような批判でいう「立憲主義」とは国家権力に対する制限を定めることによって国民の権利を保障するための手段として憲法を捉える見方である。別の言い方をすれば、そこに含まれる命令の主体は国民・名宛人は国家であり、国家の義務を憲法が定めるのは当然だが国民の義務が含まれるのはおかしいということに