ホワイトハウスの暗い秘密の内懐(うちふところ)に、短い極秘リストが存在する。そこに載っているのは、アメリカ合衆国およびその市民と国益にとってきわめて危険とみなされているために、逮捕や起訴などの法にもとづく適正手続きを経ることなく処刑されるテロリストたちである。それは〈暗殺(キル)リスト〉と呼ばれる。 毎週火曜日の朝、大統領執務室(オーヴァル・オフィス)で、〈キル・リスト〉に新たな標的をつけ加えるべきかどうかが検討される。検討するのは大統領のほか、六人の人間である。その中に、CIA長官などと並んで、世界で最も大規模で最も危険な秘密軍事組織を率いる軍高官がいる。その組織はJ-SOCといって、公式には存在しないことになっている。…… ――フレデリック・フォーサイス(黒原敏行訳)『キル・リスト』角川書店、2014年5月、p. 11 フレデリック・フォーサイスといえば、「どこからがフィクションで、ど