ジョナサン・アイブ(57)がアップルのCDO(最高デザイン責任者)を退いて、まもなく5年が経つ。 現在アイブは、米サンフランシスコに拠点を構える。アイブが所有する建物群はハンノキの木々に囲まれている。 私たちはそのうちのひとつで、ジャクソン・スクエアにある築115年の2階建ての建物にいた。1840~50年のゴールドラッシュの時期に発展したジャクソン・スクエアは、チャイナタウンと金融街の間に位置している。 「最初にこの物件を買って、それから気づいたんです。ここは広いし、街の中心部にあるじゃないかとね」と、仏高級眼鏡ブランドであるメゾン・ボネの老眼鏡をかけたアイブは言う。 そこはもともと駐車場だった。がらんとした土地を目の当たりにすると、そこにないものが見えるとアイブは言う。たとえば庭、そしてアイブが愛するロンドンのリバー・カフェのように、人が集まって交流できる場所──アイブは次々と近隣の物件