近年、台湾では俳優や音楽家など日本人アーティストの活躍が目立つ。彼らの人気の理由やその歴史的・文化的背景を、国際交流基金勤務を経て台湾を中心に活動するシンガーソングライターの馬場克樹氏が解説。 台湾で一躍“時の人”となった田中千絵さん 2008年に台湾映画史上で最大のヒット作となった『海角七号(邦題:海角七号 君想う、国境の南)』(魏徳聖監督)に一人の日本人が主演し、ブレークした。田中千絵さんである。田中さんは日本でも俳優として活動していたのだが、この映画の撮影があった前年に台湾に留学し、流ちょうな中国語を身に付けていた。これが幸いし、彼女が中国語で書いていたブログがたまたま魏監督の目に留まり、白羽の矢が立った。 当時、財団法人交流協会台北事務所の文化室長という立場で台湾に赴任していた私は、その年の台北映画祭の行事として「ジャパン・ナイト」という日本映画のプロモーションと映画関係者の交流の