「NHKスペシャル 新シルクロード2」(NHK出版 2005)より(筆者:矢部裕一): 旅の終わりに シボ(錫伯)族(注1)という少数民族が、新疆のカザフスタン国境近くのチャプチャル・シボ族自治県に住んでいます。 草原の道の旅の終わりに、私たちはこのシボ族を訪ねることにしました。彼らは遊牧民ではなく、元々は遊牧民であった古代拓跋鮮卑(たくばつせんぴ)族の末裔ではありますが、数百年前から遊牧は行わず、半農半猟の生活を送っています。なぜ、最後に遊牧民でないシボ族を訪ねるのか? それは、彼らの存在が、遊牧民の近代国家の中での遇され方を象徴しているように思えたからです。 8月28日、チャプチャル・シボ族自治県では、西遷節というお祭りが行われていました。 西遷節とはその名の通り、シボ族が西へ向かって移動した時のことを記念するお祭りで、シボ族とは18世紀、清朝皇帝の命により故郷である中国・東北地方の瀋