記者会見で安楽死の手続きについて話した、陸上女子400メートルの銀メダリストのマリーケ・フェルフールト=リオデジャネイロ 「今日、マリーケのアパートの鍵を返すから、最後にお別れに来てもいいよ」。1月31日、マリーケの父ヨスから筆者のもとへ突然連絡が入った。 車いすの元陸上選手マリーケ・フェルフールトさん(享年40歳)。2012年ロンドンパラリンピックで金メダルを獲得、16年のリオでも銀メダルを手にし、ベルギーでは誰でもが知る女性アスリートだ。わたしは17年、彼女の日本旅行を手伝ったことをきっかけに知り合い、以来大切な友人となった。 彼女が宣言通りの安楽死を遂げてから3カ月。ご両親は、マリーケが5年余り自立して住んだアパートを、涙とほこりにまみれながらようやく片付け終えた。車いす生活者用に市が提供するアパートに、マリーケが暮らした形跡はもう何もない。 ベルギーでは02年に合法化され、毎年2千