人との「つながり」に飢えているのは、携帯電話やインターネットに精通する若者たちだけではない。定年退職を迎えたシニア世代こそ、地域デビューや趣味サークルなどに「つながり」を求め、もがいているように見える。だが、つながることは、果たして人間にとって必要なものなのか。「つながらない」評論家・呉智英氏が、世に広がる「絆」至上主義に一石を投ず。 * * * 三年前の東日本大震災によって、日本の精神風土は、じわりと変化した。あれだけの大惨禍に遇って、逆に日本人は自信を深めた。大震災の直後、絶望的な状況にもかかわらず、略奪騒ぎも暴動も起きず、日本全体が復興を支援した。むろん、大破した原発処理を含め、今も未解決の課題はあるし、個別の不祥事はいくらでも指摘できるだろう。しかし、総じて文明の成熟度が明らかになった。これは日本が世界に誇るべきことである。 このことは、震災後十日の二〇一一年四月一日号の本誌で、私