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  • 『シン・ゴジラ』脚本から見えた“もう一つの物語” 『ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ』徹底考察

    第90回『キネマ旬報』ベストテンが1月10日に発表された。2016年の日映画ベストワンには『この世界の片隅に』(16年)が選出され、監督賞には同作を監督した片渕須直が選ばれた。ベスト2位に選出された『シン・ゴジラ』(16年)の庵野秀明監督は脚賞を受賞。片淵監督は『魔女の宅急便』(89年)で演出補を務め、庵野監督は『風の谷のナウシカ』(84年)の原画担当からプロとしてのキャリアをスタートさせたことで知られているが、奇しくも宮﨑駿と縁深い監督たちが、監督賞・脚賞を受賞したことになる。 さて、脚賞を受賞した『シン・ゴジラ』だが、昨年末に発売された製作資料集『ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ』(株式会社カラー)に脚が収録されたことで、活字で目にすることができるようになった。しかも、この大冊には関連の図版、関係者インタビューはもとより、複数の初期プロットから、準備稿、決定稿、完成した映画から

    『シン・ゴジラ』脚本から見えた“もう一つの物語” 『ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ』徹底考察
  • 山田尚子監督は“映画作家”の名にふさわしい存在だ 映画『聲の形』の演出法を分析

    映画作家とはどんな人物を指すだろうか。ヌーヴェル・ヴァーグを生んだことで知られるカイエ・デュ・シネマの批評家たちは、アルフレッド・ヒッチコックやハワード・ホークスを真の映画作家と見なした。この2人は職人肌の娯楽映画の監督であるが、どんな作品でも監督の個性や匂いのようなものが刻印されている。 声高に主張を掲げずとも、刻印される何かを持ちうる映画監督を映画作家と呼ぶのなら、山田尚子監督はそう呼ばれるにふさわしい存在だと『聲の形』で証明した。過去の作品とはまるで異なる雰囲気の作品でありながら、あらゆるシーンに山田尚子の刻印がある。 ほんわかとした平和な世界の可愛い女の子の物語である『けいおん!』や『たまこラブストーリー』で人気を博した山田監督が、いじめとディスコミュニケーションを中心に息苦しい世界を描くと聞いた時は驚いた。『聲の形』で山田監督は、今まで自身が描いてきた世界とは180度真逆の世界と

    山田尚子監督は“映画作家”の名にふさわしい存在だ 映画『聲の形』の演出法を分析
  • 映画『怒り』は妻夫木聡らの実力をいかに引き出したか? 演出と編集の見事さを読む

    素性の知れない人間が身近にいることに、人はどれだけ敏感だろうか。 存命していれば今年、生誕80年を迎える映画監督・若松孝二(2012年没)の映画製作プロダクションには若いスタッフがいつもたむろしていた。ある日、「伊藤はいるか?」とコワモテの男が訪ねてきた。借金の取り立て代行人だという。ところが、そんな名前の者は過去も今も在籍したことがない。「うちにはそんな人はいません」若いスタッフは平然と答えて追い返した。当にいないのだから、怖がる必要もなかった。伊藤孝が若松孝二の名だとスタッフ一同が知るのは、若松が海外映画祭に赴くために旅券を取得した時だった。ある事件で拘置されたヤクザが過去を捨て心機一転、カタギの道を歩むにあたってつけた名前が若松孝二――これが当人の明かした過去と名を名乗らなかった理由である。 『怒り』には3人の得体の知れない男が登場する。新宿二丁目に現れた大西直人(綾野剛)、

    映画『怒り』は妻夫木聡らの実力をいかに引き出したか? 演出と編集の見事さを読む
  • 『君の名は。』『聲の形』『この世界の片隅に』ーー 最新アニメ映画の音楽、その傾向と問題点について

    実写映画の批評には実写映画の批評の方法があり、アニメ映画の批評にはアニメ映画の批評の方法がある。別に、どっちもやるのがいけないなんてことはないけれど、実写映画歴史やその批評体系を意識的にとらえてきた一人としては、アニメ映画の批評には迂闊に手を出そうとは思えない。そりゃあ、物語や状況を論じることはできるけど、それは厳密に言えば映画の批評ではないので。しかし、「映画音楽」に関してそれなりに一家言ある立場から、今年の夏以降に立て続けに公開された/されるいくつかの日のアニメ映画の「音楽の使い方」について、いろいろと思うところがたまってきてしまった。というわけで、ここでは「アニメ映画音楽」に焦点を絞って論考をすすめていきたい。 まず、なにはともあれ『君の名は。』である。夏前に試写で観たタイミングですっかり心を奪われ、大ヒット作になることも確信したが(もちろん、興収100億を超える国民的映画

    『君の名は。』『聲の形』『この世界の片隅に』ーー 最新アニメ映画の音楽、その傾向と問題点について
  • 二階堂ふみのラブシーンはなぜ心を揺さぶるのか 10代で脱いだ大物女優の系譜から考察

    二階堂ふみの存在を筆者が初めて強く意識したのは、彼女が16歳の時。出世作となった『ヒミズ』でのことだ。鬼才・園子温にみそめられ、その才能を十二分に発揮。同作でヴェネツィア交際映画祭の最優秀新人賞、日アカデミー賞では新人俳優賞に選出され、瞬く間に映画界の寵児として駆け上がっていった。 その後も、園子温、中島哲也、山下敦弘らの作品に意欲的に出演を重ねる現在の活躍ぶりは、改めてここで書き記すまでもないだろう。ではなぜ二階堂ふみが、若干21歳ながら格派女優として高い評価を得ているのか。それは、間違いなく演技の幅にある。時には、関西人でも驚くレベルの大阪弁を使いこなすオネーチャン。ある時は、極道の組長の娘としてのド派手な配役をこなし、殺人者の恋人を支える健気な中学生まで、あらゆる”顔”を演じてきた。そんな中でも、個人的に最も印象強いのは熊切和嘉監督の「私の男」での表現力である。同作では、撮影当時

    二階堂ふみのラブシーンはなぜ心を揺さぶるのか 10代で脱いだ大物女優の系譜から考察
  • 『君の名は。』の大ヒットはなぜ“事件”なのか? セカイ系と美少女ゲームの文脈から読み解く

    新海誠はアニメ界の「鬼っ子」的存在 新海誠監督の新作アニメーション映画『君の名は。』が、記録的な大ヒットを続けています。公開10日間ですでに興行収入が38億円を突破したといいますから、これはもはや2010年代のアニメ界におけるひとつの「事件」といってよいでしょう。今年の夏はさまざまな意味で「平成の終わり」を実感させられるニュースが相次ぎましたが、まさにアニメ界においても、名実ともにいよいよ「ポストジブリ」の新時代が到来したことを感じさせるできごとです。 しかも注目すべきは、今回のヒットが、内容的にもスタジオジブリやスタジオ地図(細田守)のように、老若男女、幅広い層から支持されているというよりは、10~20代の若者世代、とりわけ女性層に特化して受けているらしいという点です。この『君の名は。』をめぐる現在の盛りあがりには、ゼロ年代から新海作品を観続けてきたアラサーのいち観客として、いろいろと感

    『君の名は。』の大ヒットはなぜ“事件”なのか? セカイ系と美少女ゲームの文脈から読み解く
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