ムーヴメントの解釈は十人十色というか百人百様というか、人によって違うものだけれど、年末にゴス・トラッドを取材して気がつかされたことは、彼のダブステップ解釈が音楽のスタイルではなく、違ったバックボーンの人たちが一同に会していたということである。ああー、たしかにその話は昔他の誰かからも聞かされた覚えがある。異なった階層、異なった趣味、異なった人たちが出会うという点ではゴス・トラッドの主張の通り、ダブステップはレイヴ・カルチャーの理念を再現していたということになる。まだシーンがアンダーグラウンドだった時代は。 2006年のブリアルの主張を思い出す。彼はダブステップはメインストリームに進むべきではないと繰り返していた。が、欧米ではダブステップはメインストリームとなり、こうしてあらたな分裂がはじまった。昨年リリースされたセパルキュアのデビュー・アルバムのようなアンダーグラウンドの折衷主義(ポスト・ダ
半世紀も昔を舞台にした映画を見ていると、家族という単位以上にその地域の共同体が優位であったことがわかる。アメリカ映画ではとくに顕著だ。たとえばバーに入る。客はみんな顔なじみ。注文して、カウンターに腰掛けると、「ところで、おまえんところの小僧は......」とか、「そういえば、おまえんところの女房は......」とか、へたしたら「おまえんところの犬は......」とか、他人は遠慮なくプライヴァシーに入ってくる、家のなかに共同体は容赦なく介入する。そうした土足で上がってくる共同体を家からキレイに排除したあげくに生まれた家族、孤絶化した核家族の集合体のメタファーとしてのファミリーレストランというもの(トポス)を指摘したのは越智道雄だった。 ファミレスには多くの幸福な家族がいる。しかもそれら家族同士はものの見事に隔絶されている。となりのじいさんやばあさんの皮肉のひとつも届きそうにない、それぞれのプ
日本でクリスマスが普及し、定着したのは、ホワイ・シープが主張するような博愛主義が受け入れられたからではなく、ひとつには、日本人の"区切り"の感覚にフィットしからだという説がある。"聴きおさめ""歌いおさめ"という表現があるように、新たな年を迎えるにあたって1年のうちの最後の季節の終わりを感じなければいけないときに、クリスマスという外からやってきた文化は"第九"とももにうまくハマったのである。長年養われたある種の自然感覚が、季節の"区切り"を強調したがるのだ。そういう意味では、2011年から2012年にかけては"区切り"が得意な日本人にとっても後味の悪さを覚えざるをえないと言えよう。前代未聞の暴動を経験したUKにおいても同様だ。キング・クルエル(クルル?)はその後味の悪さから登場したシンガー・ソングライターである。 僕を責めた/日々を奪った/信頼はなく/囲まれ、そして僕が地獄に堕ちるのを彼ら
x三田 格/Itaru W. Mita ロサンゼルで生まれ、築地の小学校、銀座の中学、赤坂の高校、上野の大学に入り、新宿の本屋、御茶ノ水の本屋、江戸川橋の出版社、南青山のプロデュース会社でバイトし、原宿で保坂和志らと編集プロダクションを立ち上げるもすぐに倒産。09年は編書に『水木しげる 超1000ページ』、監修書に『アンビエント・ミュージック 1969-2009』、共著に中原昌也『12枚のアルバム』、復刻本に『忌野清志郎画報 生卵』など。 〈スペクトラム・スプールズ〉(エメラルズのジョン・エリオットが〈メゴ〉傘下でA&Rを務めるレーベル)の11枚目は、バンクーヴァーからコンラッド・ヤンダフによるデビュー・アルバムで、〈ナイス・アップ・インターナショナル〉から2010年にカセットでリリースされていたもののアナログ化。これが奇しくも同じバンクーヴァーから飛び出した音響派ロカビリーのダーティー
Home > Reviews > Album Reviews > Francis Bebey - African Electronic Music 1975-1982 / BLNRB - Welcome to the Madhouse 年末ギリギリのリリース......というやつです。そういえば2011年は誰も別れ際に「よいお年を」と言いませんねー。空々しい感じがするんでしょうかねー。 こんな人がいたとは全然知りませんでしたが、マヌ・ディバンゴの次世代にあたり、カメルーンからヨーロッパに渡ったアフリカ系ギタリストのコンピレイション盤。75年から88年にかけて20枚のアルバムを残し(2000年にも1枚プラス)、前半期にあたる82年までの音源から14曲が選ばれている(ジャケットはセカンド・アルバム『ラ・コンディシオン・マスクリーヌ』と同じ)。タイトル通り、エレクトロニクスが強調されている曲は前
Jan 05,2012 UP Gerald MitchellFamily Property Underground Gallery Productions 中年期を迎え、結婚などして朝型の生活を何年も送っていると、12時を過ぎたら自然と眠くなる。ナイトライフを日常的には楽しめなくなってくる。遊べるうちにさんざん遊んでおいて良かった。我がナイトライフに後悔はない。 ポップ・ミュージックが放課後のためだけのものでなくなって久しい。R&Bやロックなどは、僕よりもさらに年上の50代や60代の人間も聴いているジャンルである。R&Bやロックは、実際のところ音楽の主題もずいぶんと幅が広い。ラヴ・ソングひとつとっても結婚生活や離婚ないしは再婚を歌っているものもあれば、親との死別、社会や哲学的な主題までと、壮年期から中年期、そして高齢期の人間にとっても聴き応えのある作品が多い。これらのジャンルには年齢相応の
Home > Reviews > Album Reviews > Various Artists / Ata Tak - Collection Box 2 Experimental Jan 04,2012 UP Various ArtistsAta Tak - Collection Box 2 Experimental SUEZAN STUDIO ザ・レジデンツの1976年のアルバムに『サード・ライヒン・ロール』がある。A面が"パレードする鉤十字"、B面が"ヒトラーはヴェジタリアン"。ザ・レジデンツはザ・KLFよりも15年も早く、著名なサンプリング音源を冒涜的に使用することであらたな意味を持たせることを試みた先駆者だが、1972年のデビューからセカンド・アルバムにあたる『サード・ライヒン・ロール(第三帝国ロール)』までの、サンフランシスコを拠点とするこの匿名会社の主な目的は、商業的に大きな
カリフォルニアはバークレーからデクスター・ブライトマンによる新種の試み。ダンス・ミュージックとして構想された音楽ではないと思うものの、いわゆるアシッド・ハウスを古典的なミニマル・ミュージックへと落とし込んだような発想が8パターンに渡って展開されている。現在のUSアンダーグラウンドはダンス・カルチャーから身体的な面で影響を受けざるを得ない場所になっているということは何度も指摘してきたつもりだけれど、ここまでその影響下に組み入れられてしまった例は稀有ではないだろうか。人によっては出来の悪いシカゴ・アシッドだと勘違いしかねないほど、その種のものに聴こえてしまう。 前半がまずはエイフェックス・ツイン"ディジェリドゥー"をシカゴ・アシッドの文脈で再現したかのような軽さと催眠効果。もしかすると本当に"ディジェリドゥー"からヒントを得てつくっているのかもしれない(アンスタム『ディスペル・ダンシィーズ』で
チルウェイヴの異端として忘れがたい面影を持つ音である。しいて異端とするのは、その手練や仔細らしい態度のためだ。ロンドンのプロデューサー、パッテンによるファースト・フル・アルバム。彼のバイオグラフィについては多くの記事が「ミステリアス」のひと言で片付けている。なにしろ質問に対して動画だか音源だかで回答したりするそうで、やっと読めたインタヴューなどでも問いを巧みにはぐらかすような発言が多く、ひと言でいってつかみどころがない。本タイトルも『グラック・ジョー・ザック・ソウ』とわけがわからない。おそらくはどう発音しても「正解だ」と言われるのだろう。 バイオや音楽性ふくめ、そうした「発音しにくさ」がひとつのコンセプトになっているようだ。どのようなバンド名や曲名も、時間が経てばその存在や音となじみ、一体化していく、と彼は述べる。だから「もしあなたが見たことのない言葉(=名前)をつくることができたなら、見
Dec 27,2011 UP U.S. GirlsU.S. Girls on KRAAK KRAAK へー。こうなるのかー。ベスト・コーストやハニー・オーウェンズの(悪)影響なのか、ソロで「アメリカの少女たち」を名乗るミーガン・レミーの3作目はレーベルを移籍し、簡単にいえばポップになった。圧迫感のあるビートが導入され、いわゆるソングライティングさえ恐れなくなっている(ついにCDヴァージョンまで出して。もしかしてアナログのレーベル・フォトは...?)。 前作『ゴー・グレイ』(10)はなんとも不思議なアルバムだった。基本的にはイフェクトをかけまくったギターの多重録音で、ある種のパーカッションや、ゲームの残響音がプラスされることもなくはないけれど、ほとんどはギターの響きだけで構成され、ヘンな表現かもしれないけれど、ダンディとしかいえない美学に貫かれていた(...なかでは「ヒズ・サンズ・フューチャ
Home > Reviews > Album Reviews > Derrick May / Heartbeat Presents Mixed By Derrick May×Air Vol.2 Dec 26,2011 UP Derrick MayHeartbeat Presents Mixed By Derrick May×Air Vol.2 ラストラム 3.11以降、相次ぐ来日キャンセルのなか、むしろ勇んで予定よりも早く来日したことは、実にデリック・メイらしい行動だった。あのいかんともしがたい凍り付くような不安のなか、彼はやって来て、ドミューンへの出演を直訴し、そして「放射能を浴びに来たゴジラか」と宇川直宏をはんぶん呆れさせるところが、良くも悪くもまあ、デリック・メイというDJの魅力にもつながっている。身体と感情が先走ってしまうのだ。理屈はたぶんあとからついてくる。賢明な人なら、普通はあ
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