2人がタッグを組んで全力を傾けた「ハイジ」と「三千里」 一例を挙げれば、「三千里」の第7話、アルゼンチンで働く母親からの連絡と仕送りが途絶えたことでマルコの家は困窮し、海辺の古いアパートに引っ越さざるを得なくなる。 マルコは父親から「今度の家は海がよく見える」と聞いていたが、実際に越してみると、アパートの最上階なのに、林立する他のアパートにさえぎられて、海はほんの少ししか見えない。失望をかみ殺したマルコは、少しでも海がよく見える場所を探そうと屋根伝いに歩き始める。海の向こうには母がいる。「海の見える場所を探す」のは、やがてマルコが母を探す旅に出ることの暗示であり、かつ「希望を求めて歩み出す」ことの暗喩に他ならない。 この場面、宮崎による高低差を活かした絶妙のレイアウト(各シーンの構図や人物配置、キャラクターのポーズ・表情などを定めた「アニメ映像の設計図」)のおかげで、マルコはただ歩いている